盛りだくさんの美容整形 認定医

 こういう地域相関研究には、いくつか限界があります。
 第一に、市町村などの集団を対象に調べた結果を、そのままに個人にあてはめることはできないという問題です。
「お茶の葉の生産量が多い地域では、胃がんの死亡率が低い」からといって、「お茶の摂取量の多い個人では、胃がんの死亡率が低い」とは限らないわけです。
 第二の、より重要な欠点として、お茶と胃がんのあいだにじっさいには関連が存在しない場合でも、第三、第四の要因の影響によって、見かけ上両者に関係があるような結果になってしまうことがあります。
これはあくまで理論上の想定にすぎませんが、たとえばお茶の葉の生産量が多い地域では、同時にビタミンCの摂取量が多く、胃がんの原因となるヘリコバククー・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染率も低ければ、じっさいにはお茶と胃がんに関係がなくても、見かけ上関係があるような結果になってしまう可能性があるわけです。
 そのため、こういう地域比較のデータだけに基づいて、緑茶と胃がんの因果関係が確認されたと考えることはできません。
あくまでも、因果関係に関する仮説を提示したデータと考えるべきで、より信頼性の高い研究を行う必要性を示した成績として、控えめに解釈する必要があります。
 胃がんと緑茶の症例対照研究 同じ緑茶と胃がんとの関係について、症例対照研究が八件行われています。
症例対照研究では、まず、すでに胃がんになった患者さんに参加してもらい、がんになる前の健康な時期(たとえば五年前)に、緑茶をどのくらい飲んでいたかを思い出し、回答してもらいます。
次に、がんになっていない健康な人たちを比較のための対照群として集めて、昔緑茶をどのくらい飲んでいたかを同じように思い出し、答えてもらいます。
そのうえで、がん患者群と対照群で、過去の摂取量を比べます。
もしも、過去の緑茶の摂取量が、胃がん患者のほうで少なく、健康な対照群のほうで多いという結果になれば、「胃がん患者は、昔緑茶を多く飲まなかったために、現在胃がんになったのだろう」と解釈します。
逆にいえば、「健康な対照群の人たちは、昔緑茶を多く飲んでいたので、現在胃がんになっていないのだろう」と解釈します。
つまり、緑茶に胃がんの予防効果があると判断するわけです。
 緑茶と胃がんの関係を調べた、八件の症例対照研究の概要を、図表4‐1にまとめました。
一九八五年(昭和六〇年)の愛知県からの報告を皮切りに、多くは一九九〇年代の半ばに報告されています。
研究はいずれも東アジア地域で行われていて、中国からのものが四件、日本のものが三件、台湾の研究が一件あります。
 八件の研究のうち、統計的に意味のあるリスク低下を認めたものが五件、統計的に意味のある結果ではないけれどリスクの低下を認めたものが二件でした。
つまり八件のうち七件が、緑茶による胃がん予防効果をうかがわせる結果だったわけです。
反面、台湾で行われた一件の研究では、統計的に意味のある結果ではないけれど、むしろリスクが高くなるという結果でした。
 以前にも症例対照研究の問題点を指摘しましたが、この研究でも、すでに胃がんに罹患した患者さんを対象に、過去の緑茶の摂取頻度を思い出してもらって調査しているということがあります。
胃がんによって腹痛などの症状がでてきて、入院して調査の対象になったときには緑茶の摂取量が以前より減少してしまい、それが過去の摂取についての回答に影響を与えている可能性があります。
 結局、症例対照研究では、緑茶を多く飲まなかったから胃がんになったのか、胃がんになって腹痛などの症状があるから緑茶を多く飲めず、それが過去の回答に影響を与えているだけなのかをきちんと区別できないという危険性があるわけです。
 とはいえ、地域相関研究や症例対照研究の手法を用いた一連の研究の結果は、緑茶による胃がんリスクの低下をうかがわせる点できわめてよく一致しました。
一九九七年(平成九年)に世界がん研究基金が公表した報告書では、こうした症例対照研究を中心とする初期の研究結果に基づいて、緑茶による胃がん予防について「可能性あり」と判定しています。
 緑茶とがん、世界の研究者の常識 なぜこの報告書の段階では、「可能性あり」という弱い判定に留まっていたのでしょうか。
一つには、人間集団を対象とする研究の絶対数が、たとえば野菜や果物とがんの研究などと比べると、ずっと少数しかなかったためです。
また、一九九七年の時点では、地域相関研究や症例対照研究など、いろいろな偏りの影響を受けやすい研究のデータしかなかったためです。
健康な人の食生活を調べて長期間追跡するコホート研究のように、より質の高い研究は、この時点ではまだ報告されていませんでした。
 そのため、この時点までの研究は、緑茶の胃がん予防効果をうかがわせる点でよく一致しているけれども、まだ一般の人に勧めるには根拠不十分であるということで、「可能性あり」という弱い判定に留まっていたわけです。
緑茶によるがん予防というのは非常に興味のある仮説です。
場合によっては有望な話かもしれません。
けれども、一般の人にむかって胃がん予防のためにお茶をたくさん飲みましょうというには、まだ科学的根拠が不十分というのが、一九九七年の時点での、世界の専門家の判断でした。
 ところが日本では、「可能性あり」をはるかに超えた、一種のがん予防の「常識」、あるいは「確立された事実」であるかのように伝えられ、一般の市民もそのような理解をする状況になっていたわけです。
 胃がんと緑茶のコポート研究 緑茶のがん予防効果を自明視するこうした傾向は、いま、急速に変化しています。
というのも、緑茶の効用を否定する大規模なコポート研究が、最近あいついで報告されているからです。
コポート研究では、数万人とか数十万人という非常に大規模な集団、しかもがんになっていない健康な人たちの集団を対象に、緑茶をどのくらい飲んでいるかをまず調べます。
次に、その人たちを長期間(五年以上)にわたり追跡調査して、胃がんになる人を確認します。
もしも、緑茶をたくさん飲んでいるグループでは胃がんの発生率が低く、緑茶をあまり飲んでいないグループでは胃がんの発生率が高いという結果になれば、緑茶の胃がん予防効果が示されたことになります。
 緑茶と胃がんの関係を調べた六件のコホート研究の概要を、図表4‐2に示します。
一九九八年(平成一〇年)のハワイ日系人の研究をきっかけに、二〇〇〇年(平成コー年)以降、日本での研究四件と、中国での研究一件が報告されています。
六件の研究のうち、統計的に意味のある、はっきりとしたリスク低下を認めたものは一件もありません。
統計的な意味はないけれど、リスクの低下傾向を示したものが一件のみです。
緑茶により胃がんリスクは低下も上昇もしない、関連なしという論文が四件ありました。
統計的にはっきりした結果ではないけれど、むしろリスクの上昇を示すものが一件ありました。
 二〇〇一年(平成コ二年)三月一日号の『ニューイングランドージャーナルーオブーメディシン』に報告された、東北大学のコホート研究を紹介します。
一九八四年(昭和五九年)に、宮城県の三地域に居住する四〇歳以上の住民二万六一三一人を対象に、アンケ度を調べました。
その後一九九二年(平成四年)末まで九年間の追跡調査を行ったところ、四一九人に胃がんの罹患を確認しました。

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